(1)綺麗な着物を着せられて。生贄の記憶の話【ブラザー辛】

(1)綺麗な着物を着せられて。生贄の記憶の話【ブラザー辛】

『生贄』にされた少女の話

ある女の子の母親Aさん曰く、その子は物心ついたときから「着物」が嫌いだった。

ごく普通のサラリーマン家庭の次女として健康で五体満足に生まれたその女の子は、産まれたときこそ大声で泣いたものの、そのあとは「お姉ちゃんの時よりぜんぜん手がかからない子」で、泣いてもオムツを変えたりミルクをあげたりすればすぐに泣き止む子だったという。

お宮参り、七五三。着物を着せようとすると殺されそうな泣き声を

ところが、生後約1ヶ月経って、お宮参りに連れていくことになったとき。その子の母親Aさんは途方に暮れた。義母が事前に買ってくれたお宮参りの産着を試しに着せようとすると、その子はものすごい勢いで泣き出して、泣き止まなくなってしまったのだとか。

そのときはまだ赤ん坊なので、何かが嫌なのだろう、と両親は諦めた。また、お宮参りは赤ちゃんばかり集まる場なので、泣いている子も他にいるだろうと、後日、産土神の神社に、気にせず連れていくことにした。着物は着いてからフワリとかけるだけでいいだろう、それなら大丈夫……。と。

ところが、当日、朝は機嫌が良かったのにいざ抱っこをして神社へ向かって歩き出すと、その子はまたしても激しく泣き出した。それでも、赤ん坊ならよくあること、と、構わず神社へ連れていった。他にも泣いている赤ん坊はたくさんいた。

けれど、その子は泣き方が違った。他の子達は、親がなんとかあやして泣き止む子達も多かったけれど、その子だけは絶対に泣き止まなかった。その子が泣いているので、泣いていなかった他の子達が釣られて泣いてしまい、その日のお宮参りは神社全体に赤ん坊の泣き声が響き渡り、不穏な雰囲気に。

お宮参りを断念すると泣き止み笑顔に

神社のスタッフの人達はなんとかなだめようとしてくれたものの、奥から偉い人が出てきて何やらお祓いをする神主とヒソヒソ話をした後、その子と親のところにやってきた。そして「どうも、この子は何か理由があって泣いているのでしょうから、どうか無理なさらずに」と、やんわりとお参りと祈祷を断られたそうだ。

そして、母親Aさんが「分かりました、帰ります」と偉い人に伝えると、その子はピタリと泣き止み笑顔まで見せたのだとか。

七五三の3歳のお祝いも断念。そのとき、その子が理由を口に

お宮参りはできなかったし、家族は「なんであんなに泣いたんだろう?この子は神社が嫌いみたいだね」なんて言い合ったけど、その後は特に変わったこともなく、保育園では保育士さんの言うことをちゃんと聞く「いい子」で、どんなときもちょったしたことで泣くこともなかった。

そして、家族の誰もがお宮参りのことをすっかり忘れたまま、2年の月日が流れた。その子は数え年で3歳になるので、七五三のお参りをすることになった。

両親はショッピングモールの中にある人気の子供向け写真館でレンタルの着物をその子に選ばせてあげようと、ふだんからよく行く大型ショッピングモールへ連れていった。その子はそれまでは楽しそうにしていたけれど、写真館の前にたどり着いた途端、またお宮参りのときのように激しく泣き出した。

母親Aさんは「どうして泣くの?何が嫌なの?」と、その子に尋ねた。すると、その子は写真館のディスプレイに並んだ七五三の赤い着物を指差して、母親がまったく予想もしていなかった恐ろしい話を語り出した。

「これ着たら死んじゃうの

これ着たら 目隠し鬼にされて

神社に閉じ込められて

動けなくて みんないなくなって

怖くて 泣いてたら 何か来たの

噛まれたの でもワンワンじゃない

誰かだよ 痛かった 嫌だよ」

3歳の子がなぜそんな話をするのか、母親は理解できなかった。ふだん読んであげている絵本にも見せているテレビにも、そんな怖い話はなく、女の子より2歳年上のお姉ちゃんもまだ5歳で、妹に怖い話をするはずがなく、そんな話を知ることも考えつくこともないはずだったり保育園でも、そんな話を聞かされるわけがない。もちろん、3歳の子が自分でそんな話を考えつくとも思えない……。

義母が手紙で打ち明けた一族の悲しい歴史

結局、お宮参りのときと同じように、その子に『七五三の着物を着せて写真を撮り、神社にお参りに行くこと』は諦めるのことになった。

七五三のお参りができなかったことを報告しに、Aさん達の暮らすマンションから徒歩で数分の義両親の家に行った。義母は泣き腫らした顔の女の子とAさんの顔を交互に見て「また大泣きして七五三もできないって?この子はどこかおかしいの?甘やかし過ぎたんじゃないの?どういうことなのAさん?」と、あきれた顔で問いただした。

Aさんは義母に、女の子が話したことをそのまま伝えた。

すると、それまで怒った態度だった義母は、途端にトーンダウンして「まあ、子供は気に入らないことがあれば泣くものよね」と言って話を終わりにした。

・・・その翌日。Aさんが郵便受けを確認すると、消印のない封筒が入っていた。中身を確認すると、それは義母からの手紙とどこかの地図のコピーだった。

“Aさん。昨日は本当のことが言えなくてごめんなさい。息子(Aさんの夫)にもこれまで教えたことはなかったけど、うちの一族は……”

そう始まる長い手紙には、Aさんの夫の一族は、Aさんが聞かされていたのとは違う、遠く離れたある地域の村だと書かれていた。戦前にすでに廃村になっていて、戦後にはもう地図から消えていた。

“昔はね。私達の村だけじゃなく、どこも、なかったことにしてるけど、どこでもやってたこと。人間なんてみんな同じ。豪雨で家が流されたり、旱魃で飢えに苦しんだり、疫病が流行ったり”

“それも、私達の村は山間にあって、そもそも風水害でたびたび大きな被害が出ていて、平地にある村なんかよりずっと、必要としていたの、自然の力を抑え込むこと、荒ぶる土地神様になんとか鎮まっていただくためのね、捧げ物をね”

そして、村そのもの、村人が全滅するかどうかの瀬戸際で土地神様に縋るのはどこも一緒で、大勢を救うために1人の命を犠牲にすることは『正しいこと』だったのだ、と続いていた。

続く。

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