【真夏の怪談】顔がまるで思い出せない男【芦屋道顕】

【真夏の怪談】顔がまるで思い出せない男【芦屋道顕】

明るく豪快な性格で新卒で共に入った仲の良い同僚も何人かいた。あるとき、辞めた同僚達で久々に飲むことになった。そのとき、男も呼ぼうと誰かが言い出した。男は喜んで参加する、と主催者に連絡をした。

当日、男を含めて6人が集まった。懐かしい面々……とはいえ、退職が一番早かった同僚でも最後に会ったのが1年前で、皆、見た目には大した変化はなかった。痩せても太ってもなく、髪にも変化もなく。

しかし、男だけは何か異様だった。主催のAは最初に男を見たとき、かつての同僚とは分からなかった。身体は大きく、声や髪型も服装も雰囲気も変わりないはずなのだが、なぜか「こんな顔だったっけ?」と違和感を感じた。

ほかの元同僚も同じように感じたようだ。男の名前をLとすると「おまえ、本当にL?」と皆、疑った。ただ、どこが昔のLと違うのか、と聞かれたら老けて見える以外には答えようがなかった。昔の顔もなぜか急に思い出せなくなかったからだ。

「なんだよおまえら。イジメかよ(苦笑)」
「整形なんかしてないぞ。外回りで日焼けはしたな」
「痩せたのは確か。一年で8kg痩せたよ」
「やっぱり痩せたせいか?」

Lは営業のときの強気は微塵も感じさせず、かつての仲間の反応を伺うように自分なりに理由を並べ立ててみた。ただ、そのあとはすぐに別の話題に移り、顔のことはその場ではもう誰も何も言わなかった。

ただ、後日Lのいないところで元同僚達は密かに男について激論を交わしていた。

「あいつ、本当にLだったか?Lを名乗る別人じゃね?」
「だけど、そもそものあいつの顔ってどんな感じだよ。俺、覚えてないから比較しようがないけど、あんな村◯元首相みたいな眉毛長い……爺さんぽかったっけ?老けるの早くね?」
「そう、なんか日焼けとか痩せたとかじゃなくて、爺さん!さすがに本人には言えなかったけど」
「そうそう。あんなイボだらけって日焼けし過ぎだよな」
「イボあったか?白目が黄ばんでて肝臓やばそうとは思ったけど。どっちかっつーと婆さん」
「俺も!どっちかと言われればババアっぽかった気がする。でも、血色良かっただろ。せいぜい60代。でも、記憶より鼻が高かった気がする」

不思議なことに、Lに会った5人とも、Lがどんな顔をしていたかが一致しなかった。LはSNSなどもやっておらず、飲み会の日も写真を撮らなかったのでLの現在の顔を確認することはできなかった。

後日、その会社が倒産したことを

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