元同僚達はニュースで知った。さらに数日後、飲み会の主催者だったAは、Lの急死の報せをLの妻から受けた。
この一年ほど「最近、何をしていても息苦しい」と訴えていて、病院に行ったが原因が分からず、心因性では?と心療内科の受診を勧められていたが、本人は行くのを拒んでいた。前の晩もやはり息苦しいとは言っていたがいつものことなので気に留めずに二人とも就寝した。朝、Lはすでに息をしていなかったそうだ。
通夜にまた飲み会のときのメンツで集まり、焼香をあげようとして皆はまた驚いた。遺影が20代の最近のLではなく、学ランを着た高校生時代と思しき写真だった。ただ、それは皆の記憶にある昔のLをさらに若くした顔で「そうそう、Lはこんな顔だった」と皆、ようやく思い出した。ただ、犯罪者やその被害者の写真ではあるまいし、高校時代の写真しかなかったのか?皆、不思議に思ってAが代表してLの妻に尋ねた。
「こんなときにすみません。遺影の写真……あれしかなかったんですかね?せめてリクスー着た写真とか」
すると、Lの妻は「私が頭がおかしくなったと思わないで信じてくれるなら」と前置きして、Aにその理由を話した。
「当然、もっと最近の彼の写真を探しました。もちろん、たくさんありました。結婚式や旅行の時の写真、誕生日のレストランで撮った写真。でも、この一年ほどは彼は写真をすごく嫌がって。鏡を見るのも嫌がってたほどで」
「『騙した客の顔が浮かんでくる』からと。彼がそう思ってるだけなら本当にストレスのせいだと思えるけれど、正直なところ私もこの一年ほど、彼の顔がときどき知らないお年寄りの顔に、しかも見るたびに違う顔に見えて怖かったんです」
「彼が原因不明の息苦しさに悩んでいたのも、本当にお年寄りの生き霊なのか、すでに亡くなった方の霊なのか分かりませんけど、祟られてたのかもと」
「最近の写真はないので、結婚式や新婚旅行のときの写真を引っ張り出してみました。そうしたら……結婚したのはあの会社に入社してからだったか、彼の顔がぜんぶやっぱり、知らないお年寄りの顔が重なったようになっていて、使えるものがなかったんです」
「それで、入社より前の高校生のときの写真を遺影に使うしかなったんです」
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