「おや。こんなの植えたかなぁ。土に何かのタネが混ざってたのかなぁ」
肥料に混ざっていた何かの果物のタネが育ち、雑草を抜くときに見落としたのかもしれない。
「しかし、こんな立派な実なら雑草じゃないな。どこかで見たぞこれは……マンゴーってやつじゃないか?」
夫婦が移住した村ではマンゴーも作っているので、肥料にそのタネが混入してもなんら不思議はない。夫はそのマンゴーらしき実をもいで、家に持ち帰った。
「おい、かあさん。うちの畑になぜかマンゴーがなってたよ。肥料にタネが混ざってたんだろう。切ってみてくれ」
「あら、そんなことってあるのね」
妻は受け取った実を水で洗うと、まな板に乗せ真ん中に包丁を入れた。ジャリ、っと嫌な感触が包丁を通じて伝わってきた。何かがおかしい。実の切れ目に指を入れ、力を入れて二つに割ると、
実の中にはびっしりと黒い粒のようなものが詰まっていた。タネか?そう思ったがよく見るとその黒い粒は蠢いていたそうじゃ。
「いやぁ!虫よ!」
夫婦はショックを受けながらも、その虫瘤(むしこぶ)と化していた果実はすぐにゴミ袋に投げ込み、這い出した虫も叩き潰した。
「なんてこった。いくら無農薬だからってこんな……。いや、まてよ。ほかの作物は?」
夫婦は畑に走った。そして驚愕した。昨日まで確かに見慣れた果物の果実がなっていた枝や蔓の先には、代わりにあの奇妙な実がいくつもなっていた。
「なんだこれは」
夫は呆然としながらも、