『その謎はすぐに解けた。男が寝ていた粗末なベッドを見ると、そこには男が横たわっていた。けれど、そのかたわらに同じ男が立って私を見ていた。ああ、この男もついに死んだのか。男は私を不思議そうに見つめて、何か話しかけようとした』
『けれど、その瞬間に男は私が立っているのとは逆の方向に顔を向け、まぶしそうな、そして嬉しそうな表情をした。それから、愛しげに誰かの名前を呼んだ。そして、消えてしまった。その男は私が見ていた限りでは孤独な人生だったけれど、そんな男にもちゃんと愛に満ちた迎えが来ていたんだ、と思うと不思議と安堵した。いつのまにか、孤独な男に自分を重ねていたのかもしれない』
『そしてなにより、それを見て、自分が遠い昔に愛した夫や仲の良かった人達、幼い頃に死んでしまったけれど愛してくれた母のことを思い出した。人間だった頃の、辛いことも多かったけれど幸せだった記憶がいくつも蘇ってきた。もう一度、やり直せたら。心からそう思った』
『思った次の瞬間、とても懐かしい、まばゆい光が見えてきた。時代が進んで灯されるようになった明るい照明の光や朝日とも違う、あの美しい光だった』
『光の中に、姿や誰なのかは分からないけれど良く知っているような、懐かしくて愛おしい誰かがいて、心に語りかけてきた』
“辛かったでしょう。苦しかったでしょう。もう、充分あなたは苦しんだ。こちらへおいで。一緒に行きましょう。こちらにはもう、あなたを傷付ける人はいないから”
『その優しい声、というか声ではないけれど伝わってきた想いに導かれて、今度は素直に光に向かって歩いた。光に包まれたら、この世で経験したすべての悲しみも苦しみも憎しみもぜんぶ、もうまるで自分に起きたこととは思えなくなって、長い長い映画を観ていて見終わったような感じがした。もう、何も苦しむことはないんだ。心のとても深いところから満たされた』
そうして、あの世でしばらく至福の時を過ごしてから、またこの世に降り立ったのじゃな。
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芦屋道顕の霊的真実
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