前回は良家の主に長男で、古い因習を守り「神との結婚」をして、生涯独身を貫かねばならぬ家系の者がいるという話をした。今回は、もう一つこちらはより恐ろしい「神への捧げ物」にされた娘の話じゃ。
■娘を神に捧げ村や一族を災いから守る因習
本来ならば人が住むに適さぬ土地というものがある。川が氾濫し濁流に飲まれる土地、痩せ枯れて作物が育たたぬ土地、地震が起きれば土砂崩れに埋まる谷間の土地、沼が腐り瘴気が充満し死に至る病の絶えぬ土地……。
これらは神の怒りであり、それを鎮めるために様々な儀式が行われてきた。平成も終わろうとするこの時代、すでにそのような因習のあった村などは廃村となっておろうが、神の怒りを鎮めるために最も効果的とされたのは生贄を捧げること。動物ではなく人間を、穢れなき赤子か7歳を迎える前の幼子の命を差し出すことで、他の村人達は難を逃れていた。
また、村ではなく「家」単位で生贄を捧げていた一族もある。先祖が誰やらの恨みを買い、その怨霊に祟られて、あるいは何やら邪神の怒りを受けて……。
本来ならば一族全員が命を落とすところ、生贄を差し出すことでほかの一族が命拾いをするのじゃな。