わしが一番最近に聞いたのは、着物の着付け教室に通い始めた女子大生が、同時期に習い出して、決して相手の方が上級者なわけでも先生でもない、ただの「お直しおばさん」につかまってしまって困っている話じゃ。
毎回、一人でなんとか着付けをしようとしていると横合いからあれこれ口出しをされ、着付けを終えても、先生でもないそのおばさんが直そうとしてくる、というものであった。
さらには、彼女はどうも妖怪に目を付けられやすいらしく、仲間と歌舞伎を観に行ったおりも、やはりなんとか学んで格も季節も問題のない着物を着て行ったにも関わらず、他人の着物を観ると口出しせずにいられない妖怪婆の一軍につかまってしもうたそうじゃ。
頼んでもいないのに帯の位置を直され、帯とコーディネートで可愛らしいはずだったレースのカラー足袋が非常識だからと、妖怪婆が持ち歩いていた白い足袋に履き替えさせられるなど大変に嫌な思いをし、すっかり歌舞伎を観に行く気力を削がれてしまったそうな。さらには、その日から高熱が出て数日寝込んでしもうたとも。
■古い着物やアンティーク、宝石には妖魔が宿りやすい
その婆達は元からそのようなお節介な性格であったのは否めない。が、