【怖い話】結末編:『祖父』の行方【芦屋道顕】

【怖い話】結末編:『祖父』の行方【芦屋道顕】

前編:【怖い話】前編:祖父が医師からの死亡確認後、半日経って生き返った【芦屋道顕】後編:【怖い話】後編:死亡確認後に生き返った祖父は別人になっていた【芦屋道顕】

家の外へ走り出していった『祖父』は行方不明に。その後……。

「その日、母を振り切って外へ飛び出していった『祖父』は、そのまま行方不明になってしまった。親族と、事情を分かってくれる近所の限られた人達と、朝も夜も捜索を続けた」

「3日目くらいからは親族も近所の人達も、朝や昼間の捜索はやめて、日が暮れてから近くの山や川沿いを探すことにした。真っ暗になった夜中もだよ。近所の人達も言っていた。『ああいうものは、夜中のほうが動きがあるだろう』とね。みんな、正直なところ、分かっていたんだ。祖父が生き返ったんじゃなくて、祖父の亡骸に、人ではないものが入り込んだんだって」

「結局1週間くらい毎晩捜索を続けても見つからなかった。近所の人達は『申し訳ないけど、これ以上は協力できない』と、捜索を止めた。うちの親族も疲れ果てて『もう、見つからない可能性だってある。我々の生活のほうが大切だ。警察に、祖父は認知症の徘徊で行方不明になったと伝えて、我々は日常生活に戻ろう』と決めて、捜索を止めた」

「警察は、祖父の捜索は『見つかるまで続ける』と口では言っていたけれど、人手も足りないし果たしてどこまでやってくれたやら。結局、翌月に『手は尽くしたけれど、成果がなかった。残念だけど捜索は打ち切る』と連絡があって、それで終わりだった」

「ところが、警察から『捜索を打ち切った』と連絡があった、その数日後に祖父の亡骸が発見された。町に一つしかない、産科のある病院の敷地内。1階の大部屋の窓の外、窓と花壇の間で発見された」

「発見されたときはもう完全に『亡骸』で、それも検死によると『死後、1ヶ月以上』経っていることになっていた。やはり、祖父は家族が看取り、医師が死亡確認をしたあのときに亡くなっていたのだ。その後、生き返ったように見えたのは祖父の亡骸を何者かが動かしていて、なんらかの目的で発見場所までやってきたんじゃないかな」

「でも、それならなぜ他の何処でもなく『産科のある病院』だったのか」

「祖父の亡骸が発見される数日前、その産科では『奇跡』が起きていた。仮死状態で生まれてきて、一度、完全に心臓が止まって”死亡確認”された赤ん坊が息を吹き返した」

「やはり、医師の診断ミスということで落ち着いたらしい。医師も看護師も赤ん坊の父親も、死んだと思った赤ん坊が生き返ったことを『奇跡だ』と喜んでいた。でも、母親だけは違った。息を吹き返し、元気良く泣き始めた赤ん坊を看護師が母親に手渡そうとすると『これは私の子じゃない!』と、叫んで拒否し、その後も意味の分からないことを叫び続けていたんだって」

「赤ん坊は検査で健康状態に問題がないことが分かり、母親と共に退院となった。でも、母親は赤ん坊を拒否し続けて、とても危険な精神状態だったので、精神科にかかることになってしまった。でも、祖父の事件に立ち会ったうちの家族や近所の人達は、その母親は『狂ってなんかいなかったんじゃ?』と、決して口に出しては言えないけれど、皆、心の中では思っていただろう。『祖父の亡骸に入っていた何かが、老いた不自由な身体を脱ぎ捨てて真新しい身体を得た』のだと」

「もしこの仮説が答えだとしたらあまりにも恐ろしいから、誤りであってほしいと思う」

【怖い話】前編:祖父が医師からの死亡確認後、半日経って生き返った【芦屋道顕】
【怖い話】後編:死亡確認後に生き返った祖父は別人になっていた【芦屋道顕】

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