【笑える霊の話】真心込めて準備してもお盆に帰って来ない霊の話【芦屋道顕】

【笑える霊の話】真心込めて準備してもお盆に帰って来ない霊の話【芦屋道顕】

【笑える霊の話】真心込めて準備してもお盆に帰って来ない霊の話

お盆じゃの。お盆と言えば地獄の釜の蓋が開きこの日だけは地獄にいる霊も鬼の責め苦を逃れ、極楽にいる霊はこの世の子孫や愛しき人のところに帰ってくると言われておる。

夫や妻に先立たれた側や愛する祖父母、父母を亡くした子や孫などの立場ではふだんは霊魂や死後の世界など信じていなくても、盆の迎え火を焚くとその夜はなんとはなしに亡き人が帰ってきてくれているように感じ、思い出話に花を咲かせたりもするものであろう。

■盆にこの世に帰ってくる霊もやはりいる

霊

霊の振る舞い、というのもおかしな表現ではあるが、霊にも人格ならぬ霊格があり、それは生前の人格そのままなのじゃ。特に死後、なんらかの理由でこの世に留まり、あるいは帰って来る霊は人として死を迎えた時点で霊的な進化も止まっているゆえ、生前に怒りっぽくプライドばかり高く口が悪かった人間は霊となっても同じ。そして、ありがた迷惑なことにそのような霊でも子孫のことを気にかけていれば、盆には子孫の元にやってきてあれこれうるさく言うわけじゃな。

★お供えのビールについたハエを「おじいちゃんかも」と言ったら祟りが!

ある家族は祖父の三回忌にあたる年の盆に親族で集まり、盆らしく盆のお供えをして皆でご馳走を食べ、酒を飲んで亡き祖父の思い出話をしていた。ふと気づくと、仏壇の前に備えたビールのグラスの内側にハエが張り付いていた。その家の娘が「うわ、汚い」と、慌ててハエを追い払おうとすると、祖母が言った。「待って。今日はお盆でしょう。おじいちゃんはお酒が大好きだったでしょう。そのハエはもしかしたらおじいちゃんかもしれないから、飲ませてやりましょう」そしてビールとハエの入ったグラスをそのままにした。

その晩、親族が帰ったあとで家族が皆寝静まってしばらくのこと。仏壇のある応接間の火災報知器が鳴り響いた。

【笑える霊の話】真心込めて準備してもお盆に帰って来ない霊の話【芦屋道顕】
家族が飛び起きて見に行くと、ロウソクも線香も、確かに消したはずなのに仏壇から火の手が上がっていた。幸いにもすぐに消し止められてボヤ騒ぎで済んだものの、消防車が飛んできたり近所の人々も起きてきたりして、家族はひたすら謝って大変な思いをしてしまった。

騒ぎが落ち着いてから祖母は家族に謝った。「実はボヤ騒ぎで起きる直前、夢の中でおじいちゃんの『ハエになるはずがないだろう!』って怒鳴り声がしたのよ。昔から怒りっぽい人だったからねぇ」

■死んでも懲りない霊。盆に存命の妻子の元に帰らず……。

帰って来られても迷惑な霊もいれば、帰りを待ち望まれているにも関わらずその気持ちを汲まぬ霊もやはりいる。そのような霊は生前もやはりそのような人間だったようじゃ。ある地域で不動産をいくつも所有していた金持ちの男は、結婚30年にもなる糟糠の妻と2人の息子がいたが、下の息子が大学に入ると同時に「俺は父親の役目はもう果たし終えた。あとは好きに生きる」と公言し、ほとんど愛人宅に入り浸っていた。

しかし仕事は熱心で、所有するアパートや雑居ビルには定期的に自ら足を運び、管理は管理会社に委託してはいたがきちんと管理がされているか、入居者に不満がないかを確認していた。物件を訪れるたびに駐車場や物件の前の道路の掃除も欠かさなかった。愛人宅と所有物件を行き来する日々を何年も送っていた男ではあったが、やがて持病の糖尿病が悪化し透析通いが始まると、愛人は男の糖尿病療養のための食事の支度や病院への送り迎えが嫌になり、ある日突然別れを告げてきた。

男は仕方なく妻子の元に帰り、それまでの自分の行いを詫びた。息子達はすでに家を出ていたが、妻が昔と変わらぬ笑顔で男を迎え入れ、男のために病院から指導された糖尿病療のための食事から生活の心得から、すべて取り入れた。その後数年かけて症状が悪化し病院で息を引き取るまで、付き添い婦の世話にもなったがほとんどの身の回りのことは妻が甲斐甲斐しく世話をした。葬儀の席では皆が「最後はやっぱり家族のところに戻ったね」「あの世で反省してるよ」などと言い合っていた。

男が死んで新盆を迎える頃には「お盆だから、久々にあの人もうちに帰ってきて、寛いでいるかしら」「お母さんの夢に出てきたりしないの?」などと言い合って亡き夫を、父を偲んでいた。

特に変わったことは起きなかったものの、後日、男が不動産の管理を委託していた会社の担当が不思議な話をした。「お盆はうちもお休みしてたんですけどね。◯◯アパートの入居者さんがゴミ集積所を掃除してる大家さんを見たと言ってるんですよ。去年、亡くなってますよって言ったら、いや、見覚えがあるあの大家さんだって」「まあ、それはきっとお盆で帰ってきたあの人ですね」

しかし、三回忌も過ぎてまた盆を迎える頃だった。「今年もまた、あの人はアパートのほうに現れるのかしら」「お母さんのそばにもう実はいるんじゃない?」などと息子達と楽しく話をしていると、家の電話が鳴った。番号は非通知だった。「お父さんだったりしてね。まあ、セールスでしょう」

男の妻が電話に出た。「もしもし。◯◯さんのお宅でしょうか」怯えた風なその女の声には、聞き覚えがあった。「ええ、そうですけど。あなた、●●さんじゃない?その節はどうも、主人がお世話になりましたわね。最後はやはり、家族のもとに帰ってきてくれましたけど。それで?なんの御用です?」

男の妻は、男の死を愛人に伝えはしたが葬儀には呼ばなかったので、ほとぼりが冷めた三回忌過ぎに、そろそろ線香くらいあげさせてほしいと頼んでくるのかと思った。

(愛人とはいえ、あの人の死に目にも会えず葬儀にも出させなかったから寂しかったでしょうね。私のことを心の狭い女だって非難でもするつもりかしら)愛人側が夫を捨てたことを知らなかった妻はそう心の中で思った。

しかし、愛人の返答は意外なものだった。「奥様ですよね?その節は本当にご迷惑おかけいたしました。正直なところ、あの人がご家族のもとに帰ってホッとしていたんです。奥様の元で亡くなられたと知って、正直なところ心が軽くなったというか」そして、こう続けた。

「・・・ただ、亡くなってから毎年、命日とお盆に、あの人が現れるんで困っているんです。うちはお盆に特に何もしていないんですけど、夢に出てきますし、あの人と離れてから飼っているうちの犬が、ふだんは大人しい子なんですけどね、お盆になると狂ったように吠えて。なぜだろうと思っていたらふと、あの人のタバコの匂いがして、ああ、あの人が帰ってきてるんだと。なので、奥様からも、お仏壇の前でも、お墓参りされるときでも、あの人に言っていただけませんか。『もう、愛人のところに行くな』と。奥様から頼めば、もう来ないでくれると思うんです」

それを聞いて、妻はあきれ果てた。「死んでも懲りないのね。いえいえ、あの人は私の言うことを聞く人ではなかったですから。これからも亡き夫を、よろしく頼みますね」

その年からは盆の迎え火も焚かず精霊棚も作らず墓参りもせず、亡き夫を偲ぶこともこともやめてしまった。

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