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久々に怪談、しかし怖くない、笑える霊の話じゃ。少々18禁であるが、ご容赦願うぞよ。
幽霊は足がないことが多い。しかしそれも霊次第。
★幽霊は現れるために非常な集中力が必要なため足元が疎かになるのか一般的
日本では昔から「幽霊には足がない」のがふつうじゃな。歴史的な根拠としては、幽霊画を描いて有名になった『円山応挙』が描いた幽霊が足がなかったから、それが幽霊画のデフォルトになったとの俗説があるものの、本当のところは分からぬようじゃ。
霊がその姿を生者に見せようとするときには、すでに肉体が存在しない状態であるゆえ、本来ならば生者には見えない『念』を集中し、生前の己の姿を再現するそうじゃ。
霊であっても『人霊』だと認識されるためには、または生前の知り合いに姿を見せるにあたっては、やはり顔を見せようとする。
ゆえに顔、上半身まではなんとか再現できるものの、下半身、特に足までは念力が及ばず、下半身や足がない幽霊が多くなるそうじゃ。
以前に紹介したが、霊になっても生前の性格が反映するゆえ、生前に集中力がなかった人間の霊は足どころか顔もはっきりしないようじゃ。
参考:【笑える霊の話】集中力がない人間が幽霊になると?【芦屋道顕】 – Verygood
また、まだ死んでおらず『生霊』として現れる場合も、その人間の集中力次第で現れ方が異なるそうな。
足が自慢の幽霊現る!?
ゆえに、『足が自慢』な人間の幽霊あるいは生霊となると、少々常識とは異なる出方をするようじゃ。
仕事も住む部屋も失ったヨシヒコ、男友達の部屋に泊めてもらう
そのような珍しき霊に遭遇したのは、夜の店で、夜の世界で働く女性達をサポートしていた(?)ヨシヒコ(仮名)が、人間関係のトラブルで店を辞めてからしばらくのこと。
バックレる形で辞めたゆえに、最終出勤月の給与は受け取れず、店が借り上げていて住ませてもらうていたマンションからも出ることになり、途方に暮れていた。
(誰か、泊めてくれるやついないかな)夜道を歩きながら、なんとか支払いが出来ているスマホで手当たり次第、友達と呼べるか呼べないかの相手に連絡をする。何人かに断られた後、男友達の1人、コウタ(仮名)からOKが出たそうな。
コウタの家はその夜、ヨシヒコがいた場所から近かったこともあり、10分ほどで到着した。そこはオートロック付きの立派なマンションで、事故物件などでもなく幽霊など出そうもない雰囲気だったそうな。
男友達のコウタは彼女に養われ幽霊など出そうもない立派なマンションに住んでいたけれど
コウタは昔から見た目が良く、高校時代には読モで少しばかり雑誌に載ったこともあり、卒業後は芸能人を目指しつつアルバイトを転々としていたそうな。
しかし芸能界デビューは叶っておらず、アルバイトの稼ぎでは家賃すら払えず、その時々に付き合っている彼女に養ってもらっているようなものだった。
そのマンションも「今カノが借りてる部屋 笑」とのこと。ただ、夜は仕事で、朝7時頃に大抵帰ってくるから夜は泊まっても構わないとのこと。ヨシヒコはありがたく泊めてもらうことにした。
コウタは翌日はバイトが休みとのこと、久々に再会した男同士で近況を話しつつ酒盛りをして、話はコウタの交際遍歴の話になった。
ヨシヒコも仕事柄、綺麗な女性はたくさん見てきたものの、付き合ったことはあまりなかった。かたや、コウタは数え上げたらキリがないほど、同じ芸能界志望の女性達と付き合ったり、付き合っているようで付き合っていなかったり(苦笑)してきたとのこと。
その遍歴は華やかで、それだけ聞くと羨ましさもあるものの、ストーカーに遭ったり、自殺未遂されたり、怖いお兄さんやお父さんを名乗る男性が出てきたり、慰謝料を請求されたりと、それなりに女遊びの報いは受けてきたとのこと、ヨシヒコは「俺はモテなくて良かった」と思ったそうな。
夜中に何かが見える?
しかし話も尽き酒も尽きて、そろそろ「寝るか」となったとき、コウタが急に酔いがさめたような真顔で
「ヨシヒコ、頼みがある。もし、寝てても隣で俺がうめき声をあげたら必ず、殴ってでも起こしてくれ。そして、理由は聞かないでくれ。万が一、お前にも何か見えても、そのことは口にしないでくれ。朝には彼女が帰ってきてるから、絶対に何か見えたとしてもそのことは言うな。絶対だ。これが守れないなら、今すぐ出ていってくれ」
と言った。
ヨシヒコは(いきなりなんだよ??霊でも出るのか?彼女には内緒なのか?どんな霊だよ?)と、つっこもうと思ったものの、酔いと眠気と、ここで騒いで追い出されても困る、との思いから「了解!」とだけ答えて、そのまま飲んでいた部屋のソファに寝転んで寝てしまった。
・・・酔ったまま寝たので、どれくらいの時間が経過したのかは分からない。しかし、コウタが予告していたように、ヨシヒコが夜中にふと目を覚ますと、コウタの寝ている隣の部屋からうめき声がした。(おお、これか!殴ってでも起こせ、だよな?)
そして、コウタの様子を見に行くと……。
えげつない、18禁状態であったゆえ再現画像はお見せできぬが、コウタの身体を、スラリとした美しい2本の、若い女性のものと思われる足が踏み付けていたそうじゃ(苦笑)
ヨシヒコは怖いよりも驚き金縛りにあったように動けなくなってしまい、しばらくコウタの身体の急所をグリグリと踏みつける足をそのまま眺めてしまったそうな。
(こ、これは痛いのか?それとも??)などと、余計なことを考えていると、それが伝わってしまったのかは定かではないが、上半身は見えないが若い女性であろうその足の持ち主らしき声がヨシヒコの頭の中に響いた。
(・・・何見てんだよッ!?帰れよブサイクッ!!)
その罵倒にショックを受けつつ、しかしそのせいで金縛りが解けたヨシヒコは顔の見えぬ足の主に向かって
「ブサイクはテメーじゃねぇのか!?顔見せろよ!見せられねー顔してんじゃねーの!?」
と罵倒し返し、すぐにコウタの顔を本気で引っ叩き、揺り起こした。「あ、ああ、アイツは?」コウタは目を覚ますとすぐに自分の身体を、霊の足により攻撃を喰らっていた箇所の具合を確認し、それからホッとため息をついた。
明らかになるコウタの忌まわしき秘密
「ヨシヒコ、ありがとう!俺、いつかアレに踏み殺されるんじゃないかと……。」
「コウタ、あれすごい、・・・足というか、下半身だけだけどすごい凶悪じゃねえの?あれ何?誰?自殺した女とか?」
「それがさ。実は俺、足フェチじゃん?」
「いや、今知った」
「うん、そうなんだ。で、昔、そういう店※にしばらく行ってた時期があって」
※そういうプレイのお店があるそうじゃ。
「でも、高いから通い続けられなくて。当時、セフレがいたんだけど、その女気に入った理由が足で」
「ああ、なんか分かった」
「そのセフレに、そういうプレイお願いしてさ。しばらくは良かったんだけど、本カノ出来たから別れたわけ」
「で、その足プレイ相手の女は自殺したと?」
「いや、生きてて、たぶん俺のことまだ探してる。本気の彼女ができたから別れるなんて言ったら、ほんとに自殺しそうと思ったらから『借金返すために傭兵になってしばらく海外に行く。そのまま死ぬかもしれないから別れよう』と伝えて夜逃げした。当時、その女の部屋に住んでたから」
「コウタ、お前って最低だな」
「でも、共通の知り合い経由で、俺が生きてて日本にいるのがバレた」
「ヤバいじゃん」
「だろ」
「ってことは?」
「霊能者に相談したら、やっぱりあれは生霊らしい。彼女には幸い視えないから、過去のトラウマで怖い夢を頻繁に見るんだと話してるんだけどさ。まいったよ。生霊女、あんなに怖い性格とは思ってもみなかった」
「だな。俺、ブサイクとか罵倒されたし」
「え?お前にそんなこと言ったの?あの女、最低だな」
「最低だな。いや、コウタ、お前らたぶんお似合いだったよ」
・・・こうして、久々に再会した男の友情は一夜にして壊れてしまったとのことじゃ。やはり、怖い話であったのう。
芦屋道顕の真夏の怪談 キュンコレ