Nさんは彼女の腕が掴めなくて、よろめいて倒れちゃって。顔をあげたら、もう彼女の姿が暗闇の中でも多少見えていたのに、まったく見えなくなってたそうよ。
・・・そして、なぜか足元から、
「私はまだ、ここにいる」
と、はっきり聞こえたんですって。
それで、それまで幽霊とか信じてなかったNさんだけど、幽霊だ!!と、確信して、怖くなってダッシュで車に駆け戻って、すぐに山を離れたんですって。
★通報する勇気が出せず、放置したけれど真相を知ることに
でも、Nさんはこのことを警察に話しても自分が疑われるだけだし、もし信じてもらえても、警察協力するなら奥さんにも説明しなきゃで、そうしたら出逢い系で女と会ってたのがバレるし、だからそのまま幽霊のことは話の分かる同僚や友達にだけ話してたそうよ。
でも、その幽霊遭遇事件をすっかり忘れた頃に、週刊誌で何年か前にデリヘルの女性が行方不明になっていて、その犯人が逮捕されたこと、遺体があの◯◯山で発見されたことを読んだんですって。
Nさんは、女の子が自分に助けを求めた(遺体を発見してほしいと伝えた)のに、無視したことで何か悪いことが起きるんじゃ、と不安に思っていたけれど幸い特に何もなくて。Nさんはその後、問い合わせて女の子のお墓にしばらくは花を供えに行っていたそうよ。
まあ、犯人も捕まったことだし、女の子が邪悪な霊になってなくてほんと、良かったわよね。おしまい。
キュンコレにて連載:芦屋道顕の真夏の怪談シリーズ