日本昔ばなしや遠野物語などでは、狐や狸に化かされた昔の村人が宴席でご馳走をたらふく食べたはずが夢で、目覚めると腹には泥や木の枝、石が詰まっていたなどの伝承がある。
あれはこの世で肉体を保ったまま騙され、現世の泥やら石やらを食わされているゆえ、なんとか現世に留まれるが、夢の中では事情は異なる。肉体を持たず魂だけで迷い込んだ異界で食わされる食物は、異界のものじゃ。魂に異界のものを取り込めば魂は変質し、現世に戻ろうにも波長が合わなくなってしまうのじゃ。
夢の中で何かを食べようとして、歯がガチっとなり目覚める経験をしたことがあるならば、すんでのところで助かったのやもしれぬぞ。
2. 夢の中で得体の知れない存在に名を呼ばれ、どこかへ連れていかれそうになる
これは異界の何者かが、おぬしの魂を肉体から完全に引き離し、仲間入りさせようとしているかあるいは喰らおうとしているときに観る夢じゃ。
魂と肉体は離れようにも、生きている間は離れられないようになっている。さながら飼い主とリードで繋がれたら犬の散歩の如く、一定の距離までは離れられるが、それ以上は離れないように、エネルギーのコードのようなもので繋がっているのじゃ。
これがあるゆえ、恐ろしい夢を見たときでも麗しい夢を見たときでも、夢を介して迷い込んだどこかに魂が置き去りにならず、目覚めて肉体に戻ることができるようになっている。しかし、それを知っている異界の住人はコードを断ち切ろうと画策する。しかし、生きた人間の肉体と魂を繋ぐコードは彼らには強過ぎて噛みちぎることもできぬ。ゆえに、魂に自発的に肉体から離れ、コードが自然に千切れる距離まで引き離そうとするのじゃな。
幽体離脱を面白半分でやってはいけない理由に、実はこの事情がある。肉体から魂をわざわざ離す行為を何度もやっていると、コードもゴム紐のように伸びて弱く、切れやすくなってしまうからじゃ。あるとき幽体離脱して、戻りたくともコードが切れてしまえばあとはあの世に行くか、異界に連れ込まれるかばかりとなる。恐ろしいことよのう。