が、相手の家系を根絶やしにする、相手が死んでもその子々孫々まで呪うには、莫大な負のエネルギーが必要となる。多くの場合「生贄」を捧げるのであるが、それは呪者自身であるか、呪者の愛する者。あるいは何の罪もない誰かを犠牲にすることもあるが、これは呪者に対して恨みを抱く新たな魂を作ることとなり非常に罪深いことである。
★なぜ「家系」を呪うのか?
それでも、長い歴史の中では「家同士の確執」や「自分の家系が相手の家の誰かに根絶やしにされた」「子供を殺され、自分の家系が途絶えた」「非常に残虐な殺され方をした」「人としての尊厳を奪われるような辱めを受けた」などで、大きな代償を払うて「相手の家系を末代まで呪い、根絶やしにする」あるいは「家系を絶やしはせず、子々孫々まで永遠に苦しめる」呪詛をかけた者もおる。
しかし、なぜ「家系」を呪うのか。もちろん、憎き相手の血筋が憎いから、ではあるが、もう一つ重要なことがある。それは、今の時代はもうあまりあてはまらぬが、昔は、
人は輪廻転生で、己の家系の子孫として生まれてくる
あるいは、かつて嫁に行った家に、転生してまた嫁に行く
ことが多かったからじゃ。
庶民はあまりなかったが、それこそお抱えの陰陽師がいたような平安貴族や、そうでなくとも伝統ある一族、伝統芸能や商売で世襲が当たり前の家系では、往々にして曽祖父の死後にすぐに生まれたその本家の男児が曽祖父の生まれ変わりであったり、かつて本家の長男の嫁だった魂が、今度はその家の娘に生まれたり、あるいは縁のある家に生まれ、その家にまた嫁いだりするのじゃな。
これが庶民であれば、末代うんぬんと言われるまでもなく、一代で終わるあるいは娘しか生まれず家系が途絶えても痛くも痒くもない。そして、家系に執着を持たなかった魂は、転生しても次は己の家系はおろか国すら違えて、江戸の町民だった魂の持ち主が、生前に聞き及び憧れていた異国・オランダに生まれ変わることすらあろう。