毎年の桃の節句は必ず娘に立派な五段飾りの雛人形を飾らせ、節句が終わると例の如く「嫁に行き遅れないように」と翌日にはしまわせていた。しかし、当然ではあるが雛人形に願掛けをしても娘はいつまでたっても独り身であった。両親はいくつも見合い話を持って来たが、なぜか断られるばかり。
★母の雛人形を供養すると驚くべきことが
数年前にその母が病で亡くなり、その娘の父が「雛人形はお母さんの嫁入り道具だったから、お母さんと一緒に旅立たせてあげよう」と言い出し、雛人形の供養を行なっている寺に持ち込んだそうじゃ。
寺に持ち込んでから数日の間、娘は不可思議な夢を見たそうじゃ。内容はおぼろげにしか覚えてはいなかったが、どの夢にも男や女が出てきて、娘をその母の日名前で呼び、罵るものであったという。
一つだけはっきり覚えているのは、ある夢に出てきた女は泣きながら「◯◯◯を寝取っておいてよく平気で……でも、もういいわ」という言葉。その◯◯◯とは、娘の父の名であったそうじゃ。
その話を父にすると、父は昔、社内恋愛でほかの女性と付き合っていたが、その友人だった娘の母と知り合い、猛アタックを受けて結局娘の母と付き合うこととなり、結婚した経緯を語ってくれたそうじゃ。
恐らく、母の雛人形が引き受けていたその女の怨念が、供養されることで「もういいわ」と、雛人形と共に成仏したのであろう。ほかにも見た夢に出てきた人物は、母が知らぬ間に恋愛関係で受けていた恨みの念によるものだったのやもしれぬ。
そして、母の雛人形を供養してから、