【芦屋道顕】猫は異界の生き物(3)神隠しに遭いかけた少年【真夏の怪談】

【芦屋道顕】猫は異界の生き物(3)神隠しに遭いかけた少年【真夏の怪談】

猫は異界の生き物(3)神隠しに遭いかけた少年【真夏の怪談】

異界に迷い込んだある少年の話

猫を愛し可愛がっていたがゆえに、異界に迷い込んだもののこの世に戻れたある少年の話をしよう。

今も昔も、人が突然いなくなり二度と現れず、探しても遺体すらみつからぬゆえ「神隠し」と呼ばれる失踪事件がある。

現代では悲しいことに犯人は概ね鬼よりも恐ろしい内面を持つ人間であることが多いが、

昔は子供がいなくなると「神様に連れて行かれた」と表現して、どうにもならぬ悲しみを運命と受け入れるようにしたものじゃ。

しかし、実はそうして消息不明になった子供の中には、神に連れて行かれたのではなく、ふとした瞬間に異界との境界を越えてしまい、こちらの世界に戻れなくなった者もおるはずじゃ。

さて、どのようなときに異界に迷い込んでしまうかはまた別に話すことにして、本題の少年について。

その少年は小学校に上がりたてで、もっとも異界に取り込まれやすい年頃であった。家の裏が林であり、近くに沼地と小さな神社があり、家の前の道がちょうど霊道になっていた。

その少年の母は心優しく信心深き人で、自然を愛し庭木の手入れもよくし、氏神となる近所の神社にはよく参拝していた。

あるとき、神社に数匹の子猫が捨てられていたと聞きつけ、その中で引き取り手のなかった真っ黒な雌の子猫を引き取った。

猫は異界の生き物(3)神隠しに遭いかけた少年【真夏の怪談】

ものごころついたばかり、当時5歳だった少年が「猫を飼いたい」と以前から言っていたのを覚えてもいたのじゃな。母は少年に子猫の世話をみるよう言いつけ、少年も大喜びで大切に世話をしていた。子猫は少年によく懐いていて、寝るときはいつも少年の布団に子猫がもぐりこんできたそうじゃ。

しかし、飼い始めてから1年半ほど経った頃、その黒猫は家の近くの道路で車にはねられ死んでしまった。少年も母も嘆き悲しみ、家の庭にその猫の墓を作った。

母は落ち込む少年を心配して、新しい猫を飼おうかと尋ねたが、少年はあの子猫の代わりはいないと断った。春には小学校に進学し友達もできて、悲しみは癒えていったようであった。

その夏、神社で行われた夏祭りの夜に少年は友人と数人で肝試しをすることになった。神社の裏の林の奥にある道祖神のあたりで、獣の呻き声を聞いたり女の悲鳴を聞いたとの噂が小学生の間で飛び交っていたため、それを確かめに行ったのじゃ。

友人2人と3人で懐中電灯だけ持ち、林の奥に入ると、長年風雨にさらされ顔がほとんどわからなくなった小さな地蔵のようなものがあった。少年3人はそこにしばらく佇んでいたが、突如強い風が吹き始め、獣の呻き声のようなものが聞こえ始めた。これはやはり危険であると、3人はすぐさま戻ることを決め、神社裏に出るはずの、来た道を戻り始めた。来たときには10分とかからず、距離も1kmあるかないかだった。

……しかし、帰り道は行けども行けども林は終わらず、見えるはずの祭の明かりも近所の家の明かりも見えぬ道が続き、さらには3人全員の懐中電灯が電池切れのように急につかなくなってしまったそうじゃ。

続く。

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