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最強の自然毒
ボツリヌス菌の吐き出すボツリヌス毒素は自然界で最強です。理論的には70kgの成人男性を砂粒よりも少ない量で死に至らしめます。なので、500mlのペットボトル1本分集めると、人類が毒素によって全滅してしまうそうな。生物テロへの応用も危惧されているこの毒素が乳児に与えた影響について、一緒に見ていきませんか?
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乳児ボツリヌス症
乳児ボツリヌス症とは、簡単に言えば食中毒なのですが、下痢や嘔吐による脱水症状ではなく、直接的に死に至る可能性があるため、注意が必要です。この病気は腸内が未発達な乳児(生後1年未満)が、蜂蜜や自家製の瓶詰め(加圧加熱処理が十分でない容器包装の食品)に混ざりこんだボツリヌス菌の芽胞(菌が過酷な状況で自分を守るために冬眠状態に入る)を食べることで発症する感染症です。過酷な状況とは、食品加工の中で加熱されたり真空パックされたりすることです。なんとなく食品は加熱すれば大丈夫!とか、真空パックだから大丈夫!という風に考えてしまいがちですが、実は今回のボツリヌス菌のように熱に強かったり、空気が無いところの方が得意(難しい言葉で嫌気性といいます)だったりで、一筋縄ではいきません。この芽胞が乳児の腸内で発芽(再び活性化)、増殖してボツリヌス毒素を出すことで発症します。生後1年を超えると腸内細菌がボツリヌスを退治してくれるので、発症しなくなります。
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乳児ボツリヌス症の主な症状
ボツリヌス症を発見するポイントは、しつこい便秘です。これは、ボツリヌス毒素が筋肉をマヒさせるため、腸がうまく働かなくなり起こります。他の症状としては、おっぱいを飲まなくなったり、首や手足の脱力が起こります。体中の筋肉がマヒしていき、最終的には呼吸をするための筋肉がマヒすることで死に至ります。余談ですが、この筋肉をマヒさせる作用を逆手に取って、額のシワ取りをする美容整形に応用されています。ボトックスといえば、聞き覚えのある方もいるかもしれませんね。
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乳児ボツリヌス症の治療
原因食品や便及び血液からボツリヌス毒素が見つかることで、乳児ボツリヌス症と診断されます。病院では呼吸管理を行い毒素が抜けるのを待ちます。早期治療ができれば良いですが、治療が遅れると体にマヒが遺ってしまいます。そして、治療が終わってもしばらくは便への毒素の排泄は続くので、家庭内や保育園での2次感染に十分注意が必要です。
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乳児ボツリヌス症の予防方法
乳児には原因となるボツリヌス菌が混入している可能性のある食品を食べさせないことが何より大切です。蜂蜜は小さい子供が口にするイメージが強く残っているので、知らず知らず…ということが怖いですね。ちなみに母乳中へはボツリヌス毒素は移行しないことがわかっているので、ママが食べる分には問題がありません。しかし、事故を防ぐためにも蜂蜜は家に置かないことが何よりの予防になりますね。
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乳児ボツリヌス症の死亡例
平成29年4月の報道で、日本国内初の乳児ボツリヌス症での死亡例が出ました。生後半年の男児が、呼吸不全などの症状で搬送され病院で死亡が確認されたというものです。男児は死亡する1ヶ月ほど前から1日2回ジュースにハチミツを混ぜた飲み物を親から与えられていたことが分かりました。健康増進のためといって与え続けていたようで、残念な結果となりました。某有名レシピサイトでも、「離乳食 はちみつ」は沢山検索にヒットします。レシピ内で注意喚起しているようですが、今回の蜂蜜のパッケージのように、読み飛ばされてしまうことも多いかもしれません。
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まとめ
乳児ボツリヌス症は、原因食品を与えないことで予防できます。正しい知識をネット上だけではなく医師にも力を借りて取り入れ、夫婦間だけではなく祖父母へも情報を共有し、事故を起こさないことが大切です。赤ちゃんの肌に触れるもの、体に入れるものは自分のこと以上に気をつけて過ごしていきたいですね。