【真夏の怪談】呪いの黒い肥料【芦屋道顕】

【真夏の怪談】呪いの黒い肥料【芦屋道顕】

その翌年、またしても組合に入るよう促された。聞けばほかの移住組もやはり組合には名前だけ参加し、会費だけは払い続けているという。組合費さえ払えばあとは特に何もしなくてよいとのことで、彼らは無難に過ごせるように、組合の名簿にサインをして、会費を納めた。

それから1週間ほど過ぎた頃、朝の散歩に行こうと夫婦の妻が家を出ると、夫婦の畑の敷地の横に10kgの米袋くらいの大きさの袋がいくつか置かれていて、メモが添えてあったそうな。

【真夏の怪談】呪いの黒い肥料【芦屋道顕】

『作物がよく育ちますよ』

袋の中身は少し嫌な臭いのする真っ黒な土だった。

妻は夫にも伝えて、その土を見せた。嫌な臭いがするが、堆肥なのだろう。夫婦は、組合費を払ったので肥料をくれるようになったのだと思い、喜んで畑作りに使うことにしたそうじゃ。

黒い土を肥料として畑にまいてから、確かにあらゆる野菜の育ちがよくなった。市販の肥料を使って育てた昨年とは比べものにならないほど丈が伸び、葉も大きかったそうじゃ。

「なるほどなぁ。農家ってのはこんないいもんを、ふだんは自分らで独占してるわけか」

「まあ、わけてもらえたんだし、いいじゃないの。あの組合費でこれなら、安いもんよ」

翌月にもまた、同じだけの袋が畑の敷地のすぐ横に置かれていた。メモもあった。

『良く育っているようでなによりです。収穫が楽しみですね』

「・・・おいおい、これは、誰かうちの畑を見張ってんのかね」

「見張ってるってほどじゃないでしょうけど、誰なのか気になるわねぇ」

夫婦は、肥料とこのメモを置いたのが誰なのか気になり、村の一軒一軒に聞いてまわった。しかし、誰も「自分ではない」と否定したそうじゃ。

「いったい、どういうことかしら。なんだか、気味が悪くなってきたわ」

「いやいや、最初に俺たちにあんな態度取ったんだから、親切にはしてみたところで、それが自分だとは言い出しにくいのもあるんじゃないか」

「そうかもねえ。田舎の人はシャイだし。もしかしたら、本当はあの肥料、組合からじゃなくて親切な誰かが勝手にやってるのかも。ほら、よそ者に親切にしたのがバレるとその人も困るのよ」

「なるほどなぁ。確かに、俺でも黙っておくだろうな」

それから毎月、土は置かれていたがメモはなくなった。夫婦は、メモは肥料を置く意図を伝えるために最初だけつけたのだろうと考え、何も思わなかったそうじゃ。

■虫瘤

ところが、収穫も迫ったある朝のこと。畑の様子を見にきた夫は、奇妙な果実を見つけた。

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