さらに遡れば昔の処刑場跡地や死体を投げ捨てていた土地ですら、今は立派なマンションや商業施設が建っている。殺人事件のあった家で新築を建てても買い手がつかないような土地ですら、公園や駐車場として活用されている。
郊外の商業施設や宿屋などで、赤字で潰れ買い手がつかずに放置される場合は、年月は経っても所有者が生きていれば建物込みでの購入者を待ち、あるいは更地にして、いずれも中に他人が入らないよう管理し最低限の手入れをするゆえ、廃墟化することはない。
そのような世の中にあって、廃墟のまま年単位で放置される場所とは、地権者がその廃墟内であれ外であれ不審死を遂げているか失踪していて正常な土地取引が成り立たない状況となっているか、土地をなんとかして手に入れた側も、手出しをできなくなっていることが多い。
どんな来歴の不動産であれ、無理矢理に取得して強引に活用できるその筋の業者すらどうにもできない廃墟は、さまざまな目に視えぬ者たちの妨害により、取り壊しができないのじゃ。それ以前に、誰かが如何なる手段でその土地を取得しようとしても、何かしらの不都合や係争が発生し、契約がままならぬなどもあろう。
そういった廃墟には、最初にそこで犠牲者が出た段階で、その犠牲者の霊のみならず近くを彷徨っていた霊や魑魅魍魎が引き寄せられ居ついている。もともと異界の出入り口が近くにあったか、霊道が通っていたならばこの世にちょうどよい棲家が出来たと異界の住人達がひっきりなしにやってきて占拠する。
ときどき、霊能者が霊の出る物件のお祓いをする話があるが、このレベルになると霊能者一人などではおよそ立ち向かえまい。
一人二人の自殺者の出た部屋や曰く付きの人形一つをお祓いするのは、卑近な言い方をすればたとえ相手が霊や魑魅魍魎とはいえ、