一時所得とは何か、ご存知ですか?「いやいやお金そんなに持ってないし」自分には関係ない?!そんなことはありません。一時所得として所得を得ることは誰にでも有り得ることで、場合によっては手続きが必要になります。今回は一時所得とは何か?基本的なことから計算方法や手続きについてご紹介します。
一時所得とは何か?わかりやすく言うと臨時収入
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得のこと。一時所得についてネットで調べると難しい言葉が並びますが、わかりやすく言うと、一時所得とは臨時収入のことです。一時所得には色々と種類がありますが、今回はそのなかで、誰もが経験し得るケースについてご紹介します。
一時所得①競馬など賭け事で儲かったときの払戻金
競馬・競輪など賭け事で儲かったお金や払い戻し金は一時所得に該当します。
一時所得②生命保険の一時金
生命保険をかけていて満期に、払い戻しされた一時金は一時所得に該当します。
一時所得③損害保険等の満期払戻金
損害保険等も同じ、満期になった時の払い戻し金は一時所得に該当します。
一時所得④ふるさと納税
最近増えているのはふるさと納税ですね。ふるさと納税の返礼品は一時所得に該当します。
一時所得⑤法人から贈与された金品
法人から金品を贈与された場合は一時所得に該当します。
一時所得⑥懸賞・福引の賞金
懸賞サイトや懸賞雑誌などで当選した場合、また地域商店街などの福引で当選した際の賞金は一時所得に該当します。
一時所得⑦遺失物拾得者が受ける報労金
財布や現金などの落とし物を拾い警察署に申告、持ち主が現れなかった際、拾った物はあなたの物になるのですが、これは一時所得に該当します。
一時所得⑧埋蔵物発見者が受ける報労金
拾った化石や土器は、基本的には警察に申請後6か月を超えたら自分の物になります(他人の土地でない限り)。ただし、歴史的・文化的価値がある物の場合は自分のものにならない可能性が高いです。その時に得るのが報労金です。古都では工事を行うとその辺から土器がゴロゴロと出土するほど、一見ないようで、こういった一時所得は時々あるものです。
一時所得⑨謝礼
報酬ではなく、誰かから謝礼をもらった場合は一時所得に該当します。
一時所得⑩立退き料
立ち退き交渉によって家屋を立ち退く際に得たお金は一時所得に該当します。
一時所得と雑所得の見分け方って?
一時所得と雑所得は見分けが難しいという声がよく挙がります。この2つの違いは「臨時収入なのか、そうでないか」です。
一時所得と雑所得の違い
雑所得とは、本業で受け取る給与や報酬以外で、他に分類できない収入のことです。例えば次のようなものが挙げられます。
- 本業以外での講演料や原稿料、印税
- ネットでの副収入
- ちょっとした単発バイト(誰かに頼まれたなど)
- 友達への貸付利子
ネットでの副収入というと、アフィリエイト収入、ポイントサイト収入、Youtuberなどが得る広告収入などがあります。
一時所得の計算方法
一時所得の計算方法についてご説明します。一時所得の計算方法は次のとおりです。
総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額 = 一時所得
例えば競馬で5レース10万円ずつ賭けたとして、そのうちの1レースのみ的中し、200万円払い戻しがあったとします。この日支払った金額は50万円ですが、払い戻しが発生したのは1つだけなので、収入を得るために支出した金額は10万円になります。上記計算式に当てはめてみましょう。
総収入金額(200万円)-支出した金額(10万円)-特別控除額(50万円) =一時所得(140万円)
一時所得は140万円ということになります。
一時所得の特別控除額とは?
一時所得には、全体に対して最高限度額で50万円の特別控除があります。
上記競馬を例に挙げると、総収入額200万円から収入を得るために支出した金額が10万円、そこから特別控除額の50万円を控除した金額が一時所得となります。もし、総収入額から収入を得るために支出した金額を差し引いた金額が50万円に満たない場合には、その金額が特別控除額となります。
保険の満期!一時所得の計算は?
次は保険金を例に挙げてみましょう。1年のうちに2社の保険会社が満期になったとします。1社目の満期保険金が500万円、2社目は150万円の満期保険金を受け取ったという場合、総収入金額は保険会社2社から受け取った万金保険金を足した金額から特別控除額(50万円)を差し引いた金額となります。
一時所得は損益通算されない
賭け事や資産運用はマイナスになることもありますね。
もしも、資産運用でマイナスが生じた場合、その損益をほかの所得から差し引くことができたらいいのですが(区分を超えて差し引く処理を損益通算という)一時所得に関しては、それができません。
一時所得が高額だったら扶養家族から外される?
例えば、夫の扶養家族である妻が、競馬や賞金当選などで高額な一時所得が発生した場合は、夫の扶養家族から外されてしまうのでしょうか?
ここでは「高額な」という金額がポイントになり、合計所得金額が38万円を超えているかどうかで、扶養家族から外れるかどうかが決まります。一時所得にかかる税金は、特別控除額(50万円)を差し引いてさらに1/2した金額に課せられます。
つまり、驚くほど高額な一時所得を得ない限り、扶養家族から外れることは無いでしょう。
一時所得には税金(所得税)が課せられる?確定申告するの?
一時所得は課税対象になるため、税金が発生します。万馬券や高額当選した場合には、確定申告をしましょう。(ただし、宝くじは省きます)
一時所得の税率は?
一時所得にかかる税金の税率はどれくらいでしょうか?一時所得にかかる税金の計算式は次のとおりです。
(総収入金額)-(収入を得るために支出した金額)-(特別控除額)× 1/2 × 税率
税率は所得金額によって異なります。税率表はインターネットで簡単に調べられますが、わかりにくい場合は税務署等に問い合わせをしましょう。
一時所得はほかの所得と合わせて(総合課税)確定申告
一時所得の金額と、ほかの所得(給料など)を合算させて確定申告によって税額の算出を行います。
ふるさと納税で高額寄付をした人は確定申告を
ふるさと納税は所得税を確定申告することによって寄付金控除が受けられます。
少し前、返礼率について問題になりましたね。税務署は私たちが確定申告をして寄付金控除を受けることで、どこの市区町村へどれくらいふるさと納税をしたのかが把握できます。
基本的に高額なふるさと納税をしない限り一時所得の申告はする必要がありません。ただし、高額なふるさと納税を行っている人については寄付金額がバレているので逃れようがありません。心当たりのある人は、指摘される前に確定申告を行っておきましょう。
申告はいくらから?一時所得で確定申告が必要な人
一時所得に確定申告は必要なのでしょうか?
一時所得の場合、年間の所得額が20万円以上、または少額でも次に該当する場合は確定申告が必要となります。
- 初めて住宅ローン控除が適用される場合
- 医療費控除を申請する場合
- 公的年金年間収入が400万円以上の場合
- 年収2000万円を超える場合
- 複数から給与を受け取っている場合
- 給与以外に20万円の所得がある場合
- 寄付金控除でワンストップ特例制度を利用しない場合
寄付金控除とは前項でご説明したふるさと納税など一定の寄付金を支払った際に行う手続きです。上記以外でも何か気になることがあれば税理士や税務署に問い合わせをしましょう。
一時所得を申告する!確定申告書の書き方
一時所得の確定申告をする際は次の書類を準備しましょう。
- 確定申告書A
- 源泉徴収票
- 控除に必要な書類(保険会社の支払通知書など)
会社からもらう源泉徴収票は提出しますので、自分用にコピーをとって残しておくとよいでしょう。
確定申告書の書き方
確定申告書Aを見ると「収入金額等」と書かれた部分があります。そこに給与所得の金額と「一時」と書かれた部分に一時所得の金額を記入しましょう。
次に「所得金額」と書かれている部分の「給与」と書かれている部分に給与所得控除後の金額を記入「一時」と書かれている部分には一時所得の1/2を掛けた金額を記入してください。後は用紙のガイドに沿って足し算をすれば合計を算出できます。
確定申告書はe-TAX・郵送・税務署持ち込み、3通りの提出方法がありますが、書き方や一時所得の金額等に不安がある場合は税務署に足を運んで係に相談しながら記入するとよいでしょう。
一時所得は会社にバレる?バレない方法
一時所得は市区町村を通じて会社に知られてしまう場合がありますが、賭け事をしている等、会社にバレたくないという人もおられるでしょう。そんなときは確定申告をする際に確定申告書Aの第2表の「住民税に関する事項」の下の部分「自分で納付(普通徴収)」に丸をしておくとよいです。
一時所得の確定申告をしないとどうなる?
一時所得の申告漏れを放置すると次の支払いを求められます。
- 無申告加算税
- 延滞税
また、申告に誤りがある場合は修正申告しなくてはなりません。
一時所得は年末調整されない
会社員は年末調整をするため税金の漏れがないと安心しがちですが、一時所得は年末調整の対象となりません。ご自身で確定申告を行いましょう。
確定申告不要な一時所得とは
前の項目で少し触れましたが、一時所得が年間20万円以下の場合は、原則確定申告をする必要がありません。
一時所得が節税対策になる?!
一時所得で節税する方法はいくつかありますが、そのなかで身近な事例をご紹介します。
生命保険の満期保険金を個人年金ではなく一時所得で受け取る
前項から例に挙げている生命保険ですが、個人年金として受け取ることもできますが、一時所得として受け取る方が節税対策となります。税制法上有利になりますし、源泉徴収されないため節税効果もあります。
ただし、保険料を負担していた人と受取人が別ですと贈与税や相続税になりますし、養老保険の場合は契約から5年以上たっていないと源泉徴収税が発生します。
最後に
一時所得とは、簡単に言うと臨時収入であること、また、誰にでも起こり得ることをお伝えしました。確定申告はそれほど難しくありませんし、勤務先にバレないようにする方法もあります。ただ、素人ではわからないことは多々ありますよね。高額な臨時収入があった時は、税理士や税務署の職員に相談し、漏れのないよう申告しましょう。