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【猫は異界の生き物】
世の東西も宗教も問わず、あらゆる霊的な事象に携わった者の多くが「猫は霊的にほかの動物と異なる」と認識しているようじゃな。
西洋では黒猫が魔女の遣いであったり、
古代エジプトでは神の遣いであったり。日本では猫には九つの命があるといわれ、また、長生きすれば尻尾が二股に裂けて妖怪・猫又になるなどとの言い伝えもある。
そして、これはあまり公には言われておらぬがわしの生業の界隈ではまことしやかに囁かれていることに「猫は異界、あの世を行き来できる」がある。
ほかのオカルト界隈の識者がなんと言うかは分からぬが、猫はやはり犬やフェレットやハムスターや兎など、ほかの動物とは異なる魂の系譜を持つ貴重な生き物である、とわしは祖父や父から教えられてきた。(余談であるが「鳥」と「虫」は猫とは異なるがこれまた霊的な事象に関わる生き物で、あの世とこの世をよく行き来するようじゃ)
詳しい理由など知る由もないが、祖父や父の蔵書や受けた霊的な相談事の記録や聞き及んだ範囲だけでも、
逸話はたくさんあるが、まずは猫を飼ったことがあると比較的多く経験することから挙げていくぞよ。
■猫が何もない空間をじっと見つめる霊的な理由とは
さっきまでのんびりと寝ていた飼い猫が、急にピクッと耳を立て体を起こし、ある一点を見つめる。さらには唸り声をあげたり、ビクッとして走り去ったりもする。これは昔、我が家で飼っていた猫もときどきやっておった。
動物の行動学の専門家であれば科学的根拠のある説明をするであろうが、ここではそういったことは置いておいて……。
霊的な理由はずばり、
猫は、人間や犬など他の生き物には見えない存在が視えている
魑魅魍魎、自然霊、生霊、死霊など。人のオーラも視え、残留思念なども感じ取れるそうじゃな。
ちなみに「飼い主の霊、残留思念」に対しては猫よりも犬のほうが敏感であるようじゃ。特に人間と共に暮らしてきた魂の系譜を持つ犬は、犬であってもいわゆるソウルメイトとなるのやもしれぬ。
さて、猫の話に戻るぞよ。昔、我が家で飼っていた猫は、よく何もない空間を凝視し、耳をふせ、毛を逆立て、フッー!っと威嚇して走り去るといったことをよくやっていた。
拝み屋だった父が客の家で生まれた子猫をもらいうけてきたのであるが、我が家のような特殊な家に来る縁を持つ猫とあって、やはり霊的なものへの反応はよその猫よりも敏感だったように思う。
家族全員にとても懐き、甘えん坊の猫で家族が外出から帰ると玄関まで出迎え、足にまとわりつくのが常であった。
が、面白いことに、父がお祓いのようなものを頼まれてしてきた帰りや、曰く付きの場所に出向いた日には、玄関で父の姿を見るやフッー!っと威嚇することがたびたびあった。
恐らく、父についてきてしまったなんらかの悪しき念やら妖(あやかし)の存在が視えていたのであろう。
そのときは父は「おお、また何かもらってきてしまったな」と笑って、家に入るのをやめて庭にまわり、
自身を祓い清める独自の儀式を行っていた。その後、改めて玄関から入ると、猫は今度は何事もなかったかのように父の足元にまとわりつくのであった。
★猫が何もない空間を凝視しても、ずっとでなければ問題なし
さて、飼い猫が家の中あるいは敷地内でなんらかの良からぬものを見つめていたとなると、悪霊や魑魅魍魎に家が取り憑かれたのかと心配であろう。
しかし、ごくたまに……。月1程度、そのようなことがあるとしても、猫が空間を凝視したのち、すぐにまた興味を失って寛ぎ始めるようであれば、あるいは子猫などは怖がって走り去ることがあるが、また戻ってきてその同じ場でふつうに寝転ぶようであれば、全くと言っていいほど問題はない。
猫が視た妖(あやかし)は、恐らくは通りすがりの小さくあまり害のない魑魅魍魎か、浮遊霊の中でも特にその家の家族と関わりがない通りすがりの霊だったはず。
猫にしてみれば、人間の目に視えない虫がそこを飛んでいたので見つめていただけ、怖がったとしてもそれは猫にとって怖い姿をしていただけで、人間が蜂を見たら逃げるのと同じ感覚なのじゃ。
通り過ぎてしまえば、なんの害もない。たまたま、その家の中を霊道が通っていたり
近くに死者が出やすいか扱う施設……例えば病院、葬儀場、火葬場、墓場などがあれば頻繁に霊的なものが視えて猫は落ち着かぬであろう。
が、それでも猫もまた慣れてしまい、野生の牛がたくさんのハエにたかられても気にせぬように、霊魂飛び交う中でもスヤスヤと眠るようになるものじゃ。山や川、森などの自然霊や魑魅魍魎が多い場所と近い家でもまた同じ。
そして、そのように飼い猫が気にしなくなってしまう類の霊や魑魅魍魎であればほぼ無害なのじゃ。
■この世と異界、猫にはどちらも重なって視えている
以前に、百鬼夜行と霊道の話はしたかと思うが、生者の世界と死者、妖怪などの世界は実は折り重なって存在しておるのじゃ。しかし、通常はお互いの姿が視えぬ。
その一番分かりやすい例えでは、テレビのチャンネルであろう。チャンネルの数だけ放送電波は飛び交っているが、あるチャンネルに合わせているとほかのチャンネルは観られない。
この世とあの世、その中間の異界はそれぞれ周波数が違うゆえ、通常はどれか一つしか観られない。生者は基本的に「この世ch」しか観られない。逆もまたしかり。
しかし、この世chに加えて「あの世ch」「異界ch」も観られる霊能者と言われる人々もいる。しかしこれは、ハッキングしているようなものじゃ。日本にいながら、イギリスの国内向けの放送電波を勝手に受信して観ているのと同じ。
さらには、滅多にいないが彼らの中には観るだけでなくそのchを放送している国に瞬間移動できてしまう者もおるのじゃな。
★猫は別世界との行き来が自由自在
異界を行き来できる人間は非常に珍しいが、猫はみな、日常的にこの世とあの世まではいかぬが異界……妖怪や霊、自然霊が棲まう世界とは行き来しておるのじゃ。
いや、行き来、という言葉は当てはまらぬ。異なるが重なり合って存在する世界の両方が同時に視えておるのじゃな。
外飼いの猫がいなくなりまったく消息不明になることが10件あるとすれば、生死はともあれこの世に留まっている可能性が半分、あとの半分は異界に行ったまま、そちらが気に入り居着いてしまったのやもしれぬ。
★死後、異界に留まる猫の魂
さて、これは猫好きにとっては少し受け入れがたき話となるが、愛猫を亡くした飼い主は、愛猫の魂と極楽浄土で再会したいと思うであろうが、実は無理なのじゃ。馬や犬とは会えた話があるのに、猫について聞かぬのはなぜか。
その答えは、
猫は死後、人間と同じ天国や極楽と呼ばれる場所には行かず、魑魅魍魎や妖怪、鬼や霊が棲まう異界に留まる
猫が魔物呼ばわりされる所以がまさにこれなのじゃ。猫は異界から来て異界に帰る特殊な魂の系譜。魔物ではないが「魔物とも共存できる」のじゃ。
★人間にとっては「魔物」でも猫にとっては「仲間」
人間が魔物と呼んでいる存在も、人間との相性が悪くお互いにいがみあっているだけで、猫にとってみればむしろ姿形は変わっていても、異界の魔物もまた仲間である。つまり、愛猫が死後に天国にいかないからといって、 地獄に落ちて鬼に食われて苦しんでいるわけではないのじゃぞ。
むしろ、異界でも力のある鬼に可愛がられ安穏と暮らしているか、死してようやく自由を得たと、誰にも飼われず異界の野山を楽しく駆け巡り、この世の鳥やネズミに類する小さな魑魅魍魎を喰らうているやもしれぬ。
しかし、猫はこの世に残した元の飼い主を忘れ果てるわけではなく、むしろこの世に存在するための肉体という姿形はなくなっても、異界にいながら飼い主の様子を見ていることもある。あまりに悲しんでいるならば、新たな肉体を得て飼い主の元に舞い戻る、情の深い猫もいる。
続く。