平成29年度分(=2017年度分)の所得税の確定申告の期限が2018年3月15日に迫っています。
個人事業主で青色申告を選択している方は普段から節税対策をあれこれ試みているかと思います。(領収書をかきあつめ、ふるさと納税し、◯◯共済や個人年金などの掛け金をせっせと払い……)
今回は、そんな青色申告の方にはもちろん、給与所得者で白色申告をされる方などでも対象に当てはまれば節税となる『医療費控除』の特例『セルフメディケーション税制』についてご紹介いたします。
画像出典: 自分でできる!確定申告の書き方 平成30年3月15日締切分(モビぶっく)
【セルフメディケーション税制とは?】
セルフメディケーション税制は、今年の3/15締切の確定申告分(平成29年度分=2017年度分)から始まった医療費控除の特例です。
過去1年間に(今回のケースでは2017年の1年間) 健康の保持増進および疾病の予防に関する取組みを行った人は、医療用医薬品から市販薬に転換された『スイッチOTC』医薬品の購入代金の合計額が1万2,000円を超えた場合、確定申告することで所得控除となる制度です。
【セルフメディケーション税制の特徴は?】
★スイッチOTC医薬品のみが控除対象
薬局やドラッグストアで売っているすべての薬ではなく、一部の薬のみ。
外箱にはこのマークがあります。
購入時のレシートにもセルフメディケーション税制の対象製品である旨が記載されています。レシートには製品名の前に★マークがついています。
スイッチOTC医薬品について詳細はこちらの記事→【確定申告】『スイッチOTC医薬品』って?どう見分けるの?【セルフメディケーション税制】
★所得税・住民税を納めている人が申告対象
給与所得者でも個人事業主でも、自分で所得税や住民税を納めている人が対象です。扶養の範囲内で働いている方は、ご自身ではなく世帯主が申告対象者です。
★従来の医療費控除よりも金額のハードルが低い
従来の医療費控除にも、市販薬の購入金額も控除対象に含まれていますが、年間医療費の自己負担額が合計で10万円を超えた場合のみ申告可能でした。
セルフメディケーション税制では、対象となるスイッチOTC医薬品の年間購入額の合計で1万2千円以上であれば申告可能となっています。
★申告者が世帯主の場合、扶養家族の購入費用を合算可能
医療費控除と同様に、世帯主が扶養家族のスイッチOTC医薬品購入費用も合算して12,000円を超えれば、申告者対象となります。
例えば、世帯主の夫が年間5500円、妻と子供2人で合計7000円購入した場合は申告した場合は5500円+7000円=12500円となり、申告対象となります。
★従来の医療費控除とセルフメディケーション税制は併用不可。どちらかを選択する
1人の申告者が従来の医療費控除とセルフメディケーション税制を併用することはできません。控除額が大きくなるどちらかを選択することになります。共働きの場合は一方が医療費控除を、もう一方がセルフメディケーション税制を申告することも可能です。
両制度での減税される額を比較には、確定申告特集ページの試算システムが便利です。
医療費控除とセルフメディケーション税制の減税額等を試算する
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tokushu/info-iryouhikoujo.htm
【申告要件満たしてる?特にフリーランスと自営業は要注意】
さて、ここまでに紹介した内容は確定申告をしたことのある方々、特に事あるごとに領収書をもらいちょっとした買い物のレシートも大切に取っておく習慣のある方々ならすでにご存知だったかもしれません。とりあえず証拠の領収書だけためておいて、年が明けたら一気に自分で青色ソフトに入力、または担当税理士に郵送して万事OK!……が、毎年この確定申告時期の流れかと思います。
忙しくてなかなか病院に通えず、ドラッグストアなどで市販薬を購入することが多い方にとってはありがたい話……ではあるのですが、実はこのセルフメディケーション税制、市販薬を12000円以上購入しただけでは適用対象となりません。
2017年の1年間、せっせとドラッグストアに行くたび風邪薬などはスイッチOTC医薬品であることを確認して購入し、レシートもしっかり取っておいたから大丈夫!と思って年を越してしまってから、セルフメディケーション税制の申告に必要な書類を確認した段階で「条件満たしてない!!」と、愕然とした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
【手続に必要な3つの書類】
1.確定申告書
2.セルフメディケーション税制の明細書
3.健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組を行ったことを明らかにする書類
1.2.は、国税庁のwebサイトからダウンロードして今から記入すれば作成できます。
しかし、この3.については、以下のどれかを去年のうちに自費で受けていることと、その証明書類が必要です。
★『 健康の保持増進および疾病の予防に関する一定の取組』を行ったことを明らかにする書類とは?
・インフルエンザの予防接種又は定期予防接種(高齢者の肺炎球菌感染症等)の領収書又は予防接種済証
・市区町村のがん検診の領収書又は結果通知表
・職場で受けた定期健康診断の結果通知表
「定期健康診断」という名称又は「勤務先(会社等)名称」が記載されている必要があります。・特定健康診査の領収書又は結果通知表
「特定健康診査」という名称又は「保険者名(ご加入の健保組合等の名称)」が記載されている必要があります。・人間ドックやがん検診をはじめとする各種健診(検診)の領収書又は結果通知表
「勤務先(会社等)名称」「保険者名(ご加入の健保組合等の名称)」が記載されている必要があります。http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tokushu/info-iryouhikoujo3.htm#section4
「メタボにならないために毎日ヨガとウォーキングしてます」「インフルエンザにならないために手洗いうがいしてます。板藍のど飴なめてます」などの自己申告ではまったくダメなんですね。
しかも、この「一定の取組」にかかる費用(健康診断や予防接種の費用)は、セルフメディケーション税制の対象にはなりません。
出典:セルフメディケーション税制に関する Q&A
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000176205.pdf
今回の確定申告が第一回目となるセルフメディケーション税制。会社の集団検診や予防接種の機会がなく、自分で意識して市区町村などに自費で申し込まなければならない自営業やフリーランスの方々にとっては、やや活用しにくい制度かもしれません。今後はより活用しやすいものになるといいですね。祈ります。
(SAE/登録販売者)
*実際の確定申告・セルフメディケーション税制の利用にあたっては、国税庁のサイトにて詳細かつ最新の情報をご確認ください。
重要なお知らせ [ 医療費控除が変わります ]
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tokushu/info-iryouhikoujo.htm
【その他参考サイト・書籍等】
知ってトクするセルフメディケーション税制
https://www.jfsmi.jp/lp/tax/info/
自分でできる!確定申告の書き方 平成30年3月15日締切分(モビぶっく)
http://s.mobi-book.com/sd/page/title/0000agws/?volume=2&pageId=00000m3l
こんなに得する!? セルフメディケーション税制(医療費控除の特例) 市販薬の費用が控除される!(モビぶっく)
http://s.mobi-book.com/sd/page/title/00008xg5/?volume=2&pageId=00000m3l
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