2017年7月15日。また一人素晴らしい俳優がこの世を去った。
皆さんはマーティン・ランドーをご存じだろうか?
1994年には『エド・ウッド』でアカデミー助演男優賞を受賞しており、
大ヒットしたアクションテレビドラマシリーズ『スパイ大作戦』のローラン・ハンド役
で大ブレイクした俳優だ。
変装のプロで「M:I」シリーズでトム・クルーズが演じたイーサン・ハントのモデルといえば
わかりやすいだろう。
話が前後するが、私が彼を初めて知ったのは
アルフレッド・ヒッチコック監督の「北北西に進路を取れ」の手下役だった。
出演シーンは短いものの、彼が映った時の瞳が印象的で忘れられなかった。
その後に『スパイ大作戦』を見始めて彼がストーリーの中で追い詰められれる度、
その瞳には狼狽が窺え、張りつめた緊張感の中ゴクリと息を呑んで見守った事を覚えている。
彼の瞳の演技にいつも私は惹き込まれていた。
彼の悲報を聞いてからすぐに何かを書く気になれなかったが
今回彼の遺作となった作品、そして私が再び惹き込まれたことを記事に書こうと思う。
忘却の中で手紙を頼りに繰り広げられる“復讐劇”
ある1通の手紙をきっかけに、家族を殺したナチスへの復讐の旅に出る男の姿を、
アトム・エゴヤン監督が描いたサスペンス作品。
「人生はビギナーズ」で史上最高齢のアカデミー助演男優賞に輝いた
クリストファー・プラマーが主人公ゼブを演じている。脇を固める俳優陣も豪華だ。
最愛の妻の死も覚えていられないほど、もの忘れがひどくなった90歳のゼブ。
ある日、ゼブは友人のマックスから1通の手紙を託される。2人はナチスの兵士に大切な家族を殺された、アウシュビッツ収容所の生存者だった。
手紙にはナチスの兵士に関する情報が記されていた。兵士の名前はルディ・コランダー。身分を偽り、今も生きているという。容疑者は4人にまで絞り込まれていた。
体が不自由なマックスの思いも背負い、ゼブは復讐を決意し、1通の手紙とおぼろげな記憶だけを頼りに単身旅に出る。
マックス役を演じるのがマーティン・ランドー…これが遺作となった。
素晴らしいサスペンス映画といって過言ではないと思う。
この映画については多くは語らない…是非とも映画をみて衝撃の結末に驚いてほしい。
そしてこの映画でマーティン・ランドー演じるマックスは体が不自由で弱々しく見えるのだが
あるシーンに括目してほしい。
私はそれこそ息を呑んだ。
そこにいるのは私が引き込まれた“瞳”が生きていた。
高齢であっても、その演技力になんら衰えはない。
あの瞳を私は一生忘れない。
あなたの演技や功績はこれからも語り継がれるだろう。
少なくとも私はあなたのファンであり続けたい。
ありがとうマーティン・ランドー、安らかにお眠り下さい。
■公開情報
『手紙は憶えている』
原題:Remember
監督:アトム・エゴヤン
出演:クリストファー・プラマー、ブルーノ・ガンツ、ユルゲン・プロホノフ、ハインツ・リーフェン、ヘンリー・ツェニー、ディーン・ノリス、マーティン・ランドー
配給:アスミック・エース
2015年/カナダ・ドイツ/95分
(c)2014, Remember Productions Inc.
公式サイト:http://remember.asmik-ace.co.jp/