6月10日(土)より新宿シネマカリテほかにて公開となった「アイム・ノット・シリアルキラー」
アメリカの田舎町に暮らす16歳の少年ジョン(マックス・レコーズ)は葬儀屋を営む家庭で育ったせいか、死体や殺人に異様な興味を示しており、ソシオパス(殺人予備軍)だと診断されていた。
「人を殺したい」そんな危険な願望を内に秘めながら、セラピストや家族の協力の下、“普通”の生活を送っていたジョン。
ある日、この田舎町で連続殺人事件が起き始める。被害者は見るも無残な姿にされ、内臓や体の一部が奪われた。
興味をそそられたジョンは調べ始めた矢先、偶然にも事件の犯人を知ってしまう。
それは隣人の穏やかな老人クローリー(クリストファー・ロイド)だった―!
思春期の少年はまるで綱渡りのような危うさ
主人公のジョンは16歳、まさに思春期まっただ中である。
思い出してほしい。視野が狭く、人の言葉に敏感で傷つきやすく、学校や家が世界のすべてだった頃を。
誰しもが一度は孤独を胸に抱き、「誰もわかってくれない」と思った経験が一度はあるだろう。
危ないことに興味をしめしたり、自分の世界を作り上げ、一つのことに没頭したり……。
この年頃は難しいと言われているがジョンもまさにそうだった。
彼はまるで綱渡りをしているように危うい存在だった。
バランスを崩してしまえばそちら側に落ちてしまうし、踏みとどまればまだ綱を渡っていける―
劇中で、彼は「殺人」に異様な興味を示しているがそれがいけないことであることはわかっている。
しかしどうしてもその衝動を止めることができずに調べるだけでは飽き足らず、行動がどんどんエスカレートしてしまう。
ジョン役のマックス・レコーズは「殺人願望」という内なる衝動に、欲望のまま従ったかと思えば葛藤し、時に狼狽し…
その特殊ではあるが少年の心情の変化を見事に演じていた。
人の道を踏み外すか否かという場面においてジョンの選択を、
こんなにも不安定で危なっかしい彼の行く末を心配せずにはいられなかった。
終盤までどちらに転ぶかわからずハラハラさせてくれるが、
ストーリーが進むにつれ成長していった彼が選択した答えが胸を熱くさせる。
クリストファー・ロイドの怪演が光る「シリアルキラー」
多くの人が思い出すであろう『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのドク役でお馴染み、
クリストファー・ロイド扮するクローリーは愛妻家で優しい老人だか、
恐ろしくも残酷な殺人鬼としての本性を隠し持っていた。
ドクを想像すると痛い目を見るぞ!あの独特のしゃがれた声は安心感すらあったが、
殺人鬼に豹変した瞬間に、張りつめた空気へと一変する。
背筋に恐ろしい戦慄が走り、画面に緊張感が増す圧倒的存在感だ。
彼がなぜシリアルキラーとなったのか?
その答えも決して許される理由にはならないけれど少し切ない。
ジョンとクローリーの共通点は「殺人」。
ジョンにとって「殺人」は好奇心の対象であり、犯人に「共感」していたように思う。
殺人への興味が発端で犯人を調べ始めたジョンだったが、ストーリーが進むにつれて、
終盤では犯人を「止めたい」と行動にでる。
ソシオパスVSシリアルキラー、追いつ追われつの二人がはじめて対峙した時の緊迫感を
是非劇場で体感してほしい。
■公開情報
『アイム・ノット・シリアルキラー』
6月10日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
監督:ビリー・オブライエン
出演:マックス・レコーズ、クリストファー・ロイド
配給:松竹メディア事業部
2016年/アメリカ/86分/PG12
(c)2016 FLOODLAND PICTURES AND THE TEA SHOP & FILM COMPANY
公式サイト:http://iamnotserialkiller.jp