なりすまし霊(1)上京後、地元愛の強い女友達と東京で再会。でも様子がおかしい【芦屋道顕の怪談2023】

例年よりもさらに蒸し暑い夏もそろそろ終わりを迎える時期ではあるが、これまでにも話してきたように幽界が消滅しかけ、魔界、異界と人間界の境界が薄れ、重なり合う領域も増えておる。

明らかにその影響であろうが、かれこれ何十年も生きてきて霊感がなかった人でも驚くような霊体験、恐怖体験をすることも増えたようじゃな。

まずはこれじゃ!

『大学進学・上京で疎遠になっていた友達』と東京で偶然に……。

地方で高校まで仲の良かった4人組の女友達

ある女性は地方の名家の本家の一人娘で、本来は跡取り娘だったものの、田舎で一生を終えたくないからと親に頼み込み、なんとか許しを得て地元の高校を卒業した後は東京にある有名な大学に通うため上京。そのまま卒業後は東京で就職をしたそうな。

両親は祖母や親族から「一人娘、跡取り娘を東京なんかに行かせるなんて」「戻って来なくなったらどうするの?」「東京で変な男の子でもできたらどうするんだ?」など言われ、彼女にも「東京でやたらな男と付き合うんじゃないよ。あんたは必ずこっちに帰ってくるんだから」と、何度も言われていたそうな。彼女はその頃は「彼氏が出来てから心配してよね!出来なかったらむしろお見合いでもなんでもするから、良い人連れてきて!」と、気にかけることもなかったそうな。

彼女は盆と年末年始には帰省しており、地元に帰るときには仲の良かった地元の友達に連絡しプチ同窓会を開いて近況報告をし合っていたそうじゃ。

地元に残った3人は地元愛が強く幸せそうだった

いつも集まるのは彼女を含めて4人で、彼女以外の3人はいずれも地元の大学を卒業し地元で就職をしていた。地元愛が強く、3人は東京には観光くらいで充分だと言っていたそうな。

やがてそのうちの2人は結婚し子供も産まれ、もう1人は小さな会社ではあるもののだからこそ出世が早く仕事で責任ある立場となり、部下が6人いていずれも優秀だと目を輝かせていて、ますます地元から離れる理由などなくなっていった。それを上京した彼女も知っていた。

彼女は東京の生活は気に入っていた。役職がないぶん気楽な仕事で残業もあまりなく、合コンで知り合いお付き合いをする彼氏もいたものの、彼氏は結婚する気は「まだない」と言い続けていた。彼女は何度か「30歳までには」と伝えていたものの、彼氏はそのたびに理屈をこねてきた。「今って医学が進んでて35歳過ぎても子供も普通にできるっていうし焦ることないじゃん。うちの先輩の奥さんは39歳で初産ですごい健康な子産んだって」などと言われ(え?そんなに待たせる気なの?)と、彼女は不安になるばかりだった。

そのため、さっさと結婚できたり、やりがいある立場になれた地元に残った3人を少しばかり羨ましく思う気持ちもあった。

ただ、帰省するたびに特に祖母が以前よりもうるさく、「もう28歳でしょ。このままじゃ子供できなくなるわよ!あなたは◯◯家の跡取りなんだから自覚を持ちなさい!」と言われ、それにうんざりしていた彼女は地元に帰る気は年々失せていった。見合い写真と釣書をいくつも見せられるものの、東京で知り合った彼氏と比べるとどれもこれも(ダサっ)と感じてしまい、会う気も起きなかった。

東京のある駅で偶然、地元の友達と再会

あるとき、会社帰りの時間に東京のある駅で、彼女は地元にいるはずの3人のうちの1人、Fから声をかけられた。

驚いたものの、久々の再会を喜び彼女はFに「この後、予定とかある?良かったら近くに良いお店があるから」と尋ねた。彼女は、Fの答えは「時間があるから行く」または「ごめん、予定が」と断るかのどちらかだと想定していた。

強引に『地元に帰る』ことを迫る友達

ところが、まったく予想外の答えが返ってきた。Fは彼女の腕をグッと掴み、

「それよりさ、一緒に◯◯(彼女達の地元)に帰ろうよ」

と、言ってきた。

そのあまりに強引な態度に驚き、異様に感じた彼女は「え?そんな急に?無理無理。明日も仕事あるし。賃貸だけど今の家気に入ってるし」と、言いながら、Fの手を振り解こうとした。

普通なら振り解こうとされたら自分から手を離すものであろうが、Fは抵抗するようにさらに彼女の腕を強く掴んだ。そして、

「帰って来いって言ってんだよぉ」

と、聞いたこともない怖い声色で、大声で叫んだ。彼女は本気で怖くなり、さらに強く腕をバッと振り、Fの手が少し緩んだところでダッシュで逃げたそうな。

地元の他の2人に連絡すると衝撃の事実が

そして、普段とは別の道を通り、かなり遠回りしてFがいないことを振り返り何度も確認して、ようやく家にたどり着いた彼女はFの不気味な行為について、地元の他の2人の友達に報告することにした。

でも、いきなりFがおかしかった!などとは伝えられないので、メッセージアプリで、最初は普通に近況報告をしようと、まず専業主婦で家にいるはずの1人のほうに連絡をした。

すると、なんと「ちょうど今、3人でいる。うちで宅飲みしてる」とのこと。驚いた彼女は「え?3人?Fもそこにいるの?」と、返事をした。すると、

そして、専業主婦の友達の家で今まさに寝転がっているFの画像が送られてきた。

(え、じゃあ私が今日、駅で会ったあれは何??)

彼女は東京でFにばったり会って腕を掴まれ、地元に帰れと言われたことを3人に伝えようと思ったものの、頭がおかしいと思われたくないので言い出せずそのときのやりとりを終えた。

翌日、彼女の両親から連絡が来た。祖母が亡くなったとのことだった。

「おばあちゃん、亡くなる前に、最後に、アタシの腕をぐーって掴んで、あなたに『帰って来い、子供を産め。帰って来いっ』って、最後の力を振り絞ってそう言ってたわよ。ごめんねこんな話で。でも、伝えないとと思ってね。だから、どうかしら。告別式で帰省したら今後の話、しましょうね」

★人よりどうにもこうにも運が悪い・不幸な人生。人並みの努力では開運しないおぬし、神頼みも効かぬおぬしは呪われているのやも?諦めるのはまだ早い。「それは呪いじゃ!自力で解けるのじゃ!」
現代の呪 | 芦屋道顕 | モビぶっく

芦屋道顕の真夏の怪談 (キュンコレ)

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